「硫黄泉って何?効能は?どこに行けば入れるの?」など、硫黄泉に関する疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。この記事では、温泉らしい香りと数々の健康効果で愛される硫黄泉について、特徴から効能、全国のおすすめ温泉地まで徹底解説します。
硫黄泉とは?定義と分類
「硫黄泉(いおうせん)」とは、温泉法に基づく泉質分類のひとつで、温泉水1kgあたり総硫黄(S)を2mg以上含む温泉のことを指します。この「総硫黄」とは、①硫化水素イオン(HS-)、②チオ硫酸イオン(S₂O₃²⁻)、③遊離硫化水素(H₂S)の合計量のことです。
硫黄泉は、遊離硫化水素の含有量によって大きく二つのタイプに分類されます。
日本温泉協会が定める新泉質名によれば、分類の方法は成分をモル単位で計算し、①+②>③の場合は「硫黄型」、①+②<③の場合は「硫化水素型」となります。
硫黄泉は特殊成分を含む「療養泉」に分類され、さまざまな健康効果が期待できることから、古くから「薬湯」として重宝されてきました。
硫黄泉の特徴

色・匂い・味
分類 | 色 | 匂い | 味 |
---|---|---|---|
硫黄型 | 無色透明、またはエメラルドグリーン | 硫黄臭(マッチの燃えた後のような臭い) | 苦みがある |
硫化水素型 | 湯の花により白く濁ることが多い | 硫化水素臭(卵の腐ったような匂い) | 苦みと酸味がある |
硫黄泉の最大の特徴は、その独特の匂いでしょう。「温泉らしい匂い」と表現されることも多いこの香りは、実は硫黄そのものではなく、硫黄と水素が化合した「硫化水素」の匂いです。この匂いの強さは泉質や含有量によって大きく異なり、わずかに香る程度から、入浴施設に近づくだけで強烈に感じるものまであります。
また、源泉が湧き出した直後は無色透明でも、空気に触れることで白く濁ってくる特徴もあります。特に硫化水素型では「湯の花」と呼ばれる白い浮遊物が見られることがあり、これは硫黄の結晶やバクテリアなどが混ざったものです。
湯ざわり
硫黄泉の湯ざわりは、そのpH値(酸性度)によって大きく変わります。
- 硫黄型(中性~アルカリ性):すべすべとした滑らかな触感で、長く浸かっているとしっとりとした感触が得られます。特にアルカリ性が強い場合は、とろとろとした独特の粘性を感じることも。
- 硫化水素型(酸性):酸性が強い場合は、肌にピリピリとした刺激を感じることがあります。これは酸性成分が肌の古い角質を溶かしている作用によるものです。
硫黄泉は他の泉質に比べて、肌への浸透効果が高いという特徴があります。そのため、入浴後も長く体が温まり、保温効果が持続することが多いでしょう。
硫黄泉の効能・効果

硫黄泉には多様な健康効果があり、「美肌の湯」「皮膚病の湯」「生活習慣病の湯」など、さまざまな別名で呼ばれています。その主な効能を見ていきましょう。
皮膚疾患への効果
硫黄泉の最も知られた効能は、皮膚疾患への効果です。硫黄には強い殺菌作用・抗炎症作用があり、以下のような皮膚トラブルに効果が期待できます。
- アトピー性皮膚炎
- 尋常性乾癬
- 慢性湿疹
- 表皮化膿症
- にきび・吹き出物
- 傷の治癒促進
また、硫黄には余分な皮脂を取り除く作用もあるため、オイリー肌の方にも適しています。さらに、シミの原因となるメラニンの生成を抑制する効果も期待できるため、「美白効果」や「シミ予防の湯」とも呼ばれます。

硫黄は肌の新陳代謝を促進し、古い角質を取り除く効果があります。そのため、長期的に入浴を続けることで肌のターンオーバーが正常化し、肌質が改善する効果が期待できます。
循環器系への効果
特に「硫化水素型」の硫黄泉では、硫化水素が皮膚から吸収され、血管を拡張させる効果があります。これにより以下のような効果が期待できます。
- 末梢循環障害の改善
- 冷え性の緩和
- 高血圧(軽症)の改善
- 動脈硬化症の予防・改善
硫化水素には血管拡張作用があり、血流を促進することで体の隅々まで血液が行き渡りやすくなります。そのため、「硫黄泉は冷え性に効く」という言い伝えもあるのです。
代謝系への効果
硫黄泉には代謝を高める効果もあります。
- 耐糖能異常(糖尿病)の改善
- 高コレステロール血症の改善
- 痛風の緩和
- 便秘の改善
これらの効果から、硫黄泉は「生活習慣病の湯」「メタボの湯」とも呼ばれています。硫黄成分がコレステロールの代謝を助け、体外への排出を促す作用があるためです。
飲用の効果
一部の硫黄泉は飲泉(温泉水を飲むこと)が可能で、以下のような効果が期待できます。
- インスリンの作用を高め、血糖値を低下させる効果
- 血中コレステロール値を下げる効果
- 肝機能の改善
注意! 飲泉は必ず「飲用可能」と表示されている温泉水のみで行いましょう。すべての硫黄泉が飲用に適しているわけではありません。また、一日の飲用量は200~500ml程度を目安に、医師の指導のもとで行うことをおすすめします。
硫黄泉に入浴する際の注意点


効能が高い一方で、硫黄泉は体への作用も強いため、入浴の際はいくつかの注意点があります。
- 湯あたりに注意
硫黄泉は皮膚への浸透効果が高く、数ある泉質の中でも「湯あたり」しやすい温泉です。初めて入る場合や体調がすぐれない時は、短時間(5~10分程度)の入浴にとどめましょう。 - 肌荒れに注意
硫黄泉の高い殺菌力は、肌への刺激も強いことを意味します。敏感肌や乾燥肌の方は、肌が荒れる場合があります。心配な場合は、入浴後にシャワーでしっかり洗い流すことをおすすめします。 - 金属製品の変色に注意
硫黄泉に含まれる硫化水素は金属を酸化させ、黒く変色させる性質があります。金属製のアクセサリー(指輪、ネックレス、ピアスなど)、腕時計、メガネなどは外してから入浴しましょう。湯気だけでも変色することがあるので要注意です。 - 換気に気をつける
特に硫化水素型の硫黄泉では、高濃度の硫化水素ガスを吸引すると健康被害を生じる可能性があります。密閉された浴室では十分な換気を心がけ、頭痛やめまいを感じたらすぐに浴室から出るようにしましょう。
硫黄泉の浴用が適さない方 |
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・皮膚または粘膜が過敏な方 ・高齢者で皮膚が乾燥している方 ・重度の心臓疾患や呼吸器疾患をお持ちの方 ・開放性の傷がある方 ・急性期の病気や炎症を抱えている方 |
体調不良を感じた場合は、すぐに入浴を中止し、必要に応じて医師に相談しましょう。
硫黄泉が楽しめるおすすめ温泉地


日本全国には多くの硫黄泉が湧き出ています。地域別に特に人気の高い硫黄泉の温泉地をご紹介します。
北海道・東北エリア
登別温泉(北海道)
北海道を代表する温泉地で、「地獄谷」と呼ばれる熱泥が噴出するエリアが有名。9種類の泉質が湧出する”温泉のデパート”と称され、その中でも硫黄泉は特に人気。硫黄の香りが強く、白濁した湯が特徴です。
酸ヶ湯温泉(青森県)
酸性・含硫黄泉の名湯で、「ヒバ千人風呂」と呼ばれる大浴場が有名。強い酸性の白濁した湯は、皮膚病に効果があるとされています。八甲田山の麓に位置し、冬は雪見風呂が楽しめます。
玉川温泉(秋田県)
日本一の強酸性泉(pH1.2前後)で、高い放射能泉としても知られています。湯治場として長い歴史を持ち、独特の入浴法「玉川温泉式療法」でがん患者などが多く訪れます。
高湯温泉(福島県)
吾妻山の山麓に湧く温泉で、白濁した硫黄泉が特徴。「玉子湯」という名前の通り、温泉で卵を茹でることができる高温泉があります。開湯は平安時代と古く、歴史ある温泉地です。
関東エリア
草津温泉(群馬県)
「日本三名泉」のひとつで、強酸性の硫黄泉が特徴。湯畑を中心に温泉街が広がり、湯もみショーも人気。泉質の良さと豊富な湯量で知られ、江戸時代から「万病に効く」と評判でした。
万座温泉(群馬県)
標高1,800mの高地に位置する温泉地で、日本で最も硫黄含有量が多いとされる硫黄泉が湧出。真っ白な乳白色の湯は強い硫黄臭があり、硫黄泉好きには堪らない名湯です。
日光湯元温泉(栃木県)
奥日光の国立公園内にある温泉地で、エメラルドグリーンの硫黄泉が特徴。周囲の美しい自然と相まって、風情ある湯治場として親しまれています。湯の花が多く含まれる濃厚な温泉です。
那須湯本温泉(栃木県)
開湯1380年と言われる歴史ある温泉地。強い硫黄の香りがする白濁した湯が特徴で、「鹿の湯」など由緒ある共同浴場があります。那須高原の観光拠点としても人気です。
中部エリア
野沢温泉(長野県)
1300年以上の歴史を持つ温泉地で、13カ所の共同浴場(外湯)が無料で利用できます。アルカリ性単純硫黄泉で、湯の花が多く、肌がすべすべになると評判です。冬はスキーリゾートとしても有名。
燕温泉(新潟県)
妙高山の山腹に位置する秘湯。「河原の湯」という混浴露天風呂が有名で、乳白色の含硫黄-ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫黄塩・塩化物泉が湧き出ています。「美人の湯」とも呼ばれる名湯です。
近畿・中国・四国エリア
湯の峰温泉(和歌山県)
世界遺産「熊野古道」沿いにある日本最古の温泉といわれる湯治場。白い藻のような湯の花が浮かぶ無色透明の硫黄泉が特徴で、「つぼ湯」という世界遺産に登録された温泉もあります。
三朝温泉(鳥取県)
ラドン含有量が日本一と言われる放射能泉でもありますが、硫黄成分も含んでいます。千年以上の歴史を持ち、「世界屈指のラドン泉」として国際的にも知られる温泉地です。
九州エリア
雲仙温泉(長崎県)
雲仙岳の中腹に位置する温泉地で、日本初の国立公園に指定されました。pH値2.4前後の強酸性単純硫黄泉が特徴で、「地獄」と呼ばれる噴気地帯では温泉の蒸気が立ち上る様子を見学できます。
霧島温泉(鹿児島県)
活火山・霧島山の山麓に広がる温泉郷。乳白色の単純硫黄泉(硫化水素型)が湧出し、皮膚病や神経痛に効果があるとされています。大浴場や露天風呂から雄大な自然を望むことができます。
他の泉質との違い


硫黄泉と他の主要な泉質にはどのような違いがあるのでしょうか。主な特徴を比較してみましょう。
泉質 | 主な特徴 | 主な効能 | 湯ざわり |
---|---|---|---|
硫黄泉 | 硫黄臭または卵の腐ったような匂い、乳白色または透明 | 皮膚病、高血圧、動脈硬化、糖尿病、美肌効果 | 刺激性あり(特に酸性の場合) |
単純温泉 | 無色透明、無臭、無味 | 神経痛、疲労回復、リラクゼーション | やさしく、刺激が少ない |
炭酸水素塩泉 | 無色透明、無臭 | アトピー、美肌効果、リウマチ、神経痛 | しっとりつるつる感 |
塩化物泉 | 無色透明または微黄色、塩辛い | 冷え性、神経痛、関節痛、切り傷 | 熱をよく持ち、保温効果高い |
酸性泉 | 強い酸性(pH3未満)、刺激臭 | 皮膚病、疥癬、水虫 | 強い刺激、ピリピリ感 |
硫黄泉の大きな特徴は、他の泉質と比べて「臭い」が明確であることと、皮膚への作用が強いことです。また、硫黄泉は入浴後の保温効果も高く、体の芯からじんわりと温まる感覚が長く続きます。
硫黄泉に関するよくある質問
まとめ:硫黄泉の魅力


硫黄泉は、特徴的な香りと多彩な健康効果で、古くから「薬湯」として親しまれてきました。この記事でご紹介したように、硫黄泉には以下のような大きな魅力があります。
- 多彩な健康効果:皮膚疾患の改善、美肌効果、循環器系の改善、代謝促進など
- 本物の温泉体験:「温泉らしい香り」を楽しめる、日本の温泉文化の象徴
- 全国各地で楽しめる:北は北海道から南は九州まで、様々な特色ある硫黄泉が点在
一方で、硫黄泉は体への作用が強いため、入浴時間や頻度に注意し、自分の体調に合わせて楽しむことが大切です。特に初めて訪れる温泉では、短時間から始めて、徐々に体を慣らしていくことをおすすめします。
日本は世界有数の温泉大国であり、その中でも硫黄泉は最も「温泉らしい温泉」として多くの人に愛されています。それぞれの温泉地には独自の歴史や文化、周辺の自然環境や名物料理など、温泉以外の魅力も豊富にあります。
この記事を参考に、ぜひあなたも硫黄泉の魅力を体験してみてください。心身ともにリフレッシュする素晴らしい温泉体験が待っています。
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